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SPECIAL COLUMNスペシャルコラム

LIVING SOILS / 生きた土壌

柳 忠之
2020/6/19掲載
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  • 近年、世界的な規模で異変が起きている。大型化した台風やハリケーンによる大規模災害。干魃とそれにともなう山火事の発生。そのような自然災害がワイン&スピリッツ業界にもたらす被害も無視し得ない。事実、カリフォルニアやオーストラリアで発生した山火事はブドウ畑の一部を焼き、その際生じた煙がワインの香りに影響を及ぼした。
  • 21世紀に入ってからというもの気温は確実に上昇を続け、各産地でブドウの収穫期が早まっている。そのため、ある土地に適したブドウ品種が、100年後も適しているとは言えなくなってきた。
  • このような異変の主たる原因は温室効果ガスにあると考えられている。それは人類が招いた環境破壊の結果である。

環境問題と持続可能な未来をテーマに
モエ ヘネシーがパリでシンポジウムを開催

すでにフランスでも新型コロナウィルスの感染者が確認されていたとはいえ、ヨーロッパはまだ安心と誰もが思っていた2020年2月10日、パリ市内で繰り広げられるワイン&スピリッツの見本市「ヴィネクスポ・パリ」の会場において、モエ ヘネシーは「Living Soils(生きた土壌)」と銘打ち、3日間にわたるシンポジウムを開催した。

これは業界が直面する環境問題に業界最大手のモエ ヘネシーが真正面から取り組み、持続可能な未来の実現を目指す姿勢を内外に強くアピールするもの。同グループの経営者や醸造家、各国の研究者、ジャーナリスト、ソムリエらがパネリストとして招かれ、活発な論議が交わされた。

シンポジウムが開催されたモエ ヘネシーのブースはひと際広く、入り口付近にはモエ・シャンドンで使用している電動トラクターやヘネシーが試験運用中の自走式除草ロボットを展示。壁のボードはリサイクルコルクからなり、登壇するパネリストや視聴者が座るベンチは、ワインやコニャックの熟成に使われた樽材を再利用したものだった。

シャンパーニュ地方の所有畑は
2020年中に除草剤フリー
持続可能なブドウ栽培の研究に
2000万ユーロの投資

このシンポジウムを実現させたのはモエ ヘネシーCEOのフィリップ・ショウス氏。イベントの冒頭、挨拶に立ったショウスCEOは、「生きた土壌を通じ、モエ ヘネシーは世界中のコミュニティを結びつけ、グローバルな社会的責任プログラムの発展を目指す」と宣言。「ワインのボトルには、世界中のあらゆる書物より多くの哲学が詰まっている」というパストゥールの言葉を引用し、気候変動への対応、土壌の保全、水の確保と省エネ、サプライチェーンの持続可能性など、「生きた土壌」を守るため、あらゆる課題に取り組むと決意を述べた。

具体的には、グループ傘下のシャンパーニュ・メゾンが所有するすべてのブドウ畑において、2020年中に除草剤の使用をゼロに、持続可能なブドウ栽培の研究にあたり、シャンパーニュ地方の研究センターに2000万ユーロ(約24億円)を投資、知識と実践の共有を進めるため、「生きた土壌の学びの場」を作ることを発表した。

3日間、さまざまなテーマの討論が繰り広げられたが、その中から興味深いテーマをいくつかピックアップする。

何ものにも変えがたい「生きた土壌」
自然に敬意を払うことが最優先

まず、『我々にとって最も貴重な資源である土壌を守り、再生するには?』という討論では、ザンビア大学のリディア・シャバラ教授が、「ワインや食べ物は、すべて土壌のおかげで成り立っている。土壌に棲息する微生物の存在が大きく、生きた土壌とはつまり、微生物の豊富な土壌である」と語った。同じく国連で土壌に関する世界的パートナーシップの事務局長を務めるロナルド・バルガス博士も、「一度汚染された土壌を再生させるのは高くつく」と警告し、「土壌の健全さに留意し、土壌が汚染されぬよう、自然に敬意を払うことが最優先」と述べた。

ふたりの提言を受けヴーヴ・クリコの栽培責任者であるロマン・ル・ギユー氏は、「生きた土壌は何ものにも変えがたい」として、3つの理由を挙げた。第1に生命はすべからく土壌から生まれること。第2に土壌とは遺産であり、世代を超えて受け継がれていくべきものであること。第3にAOC(原産地呼称)はテロワールを反映すべきものであり、土壌はその大きな部分を担うことである。「したがって、我々生産者はテロワール固有の特徴をワインやシャンパーニュに表現するため、土壌には特別留意する必要がある」と語った。

PROFILE
柳 忠之

ワイン専門誌記者を経て、1997年に独立。業界歴30年のワインジャーナリスト。ワイン専門誌のほか、ライフスタイル誌にもワイン関連の記事を寄稿。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ、ボルドー・ボンタン騎士団名誉コマンドゥール。

3 PILLARS OF OUR CSR

MHDでは「持続的発展 / 環境」「責任ある飲酒」「社会貢献」を3本柱とし、
CSR活動を行ってまいります。

なお、ディアジオ グローバルでも、
環境負荷の低減」、「適正な飲酒の促進」、「活発なコミュニティの構築」の3つのエリアで、
CSR活動を行っています。